マンションの購入や売却を検討するとき、以前なら「マンション 売却 おすすめ」と検索していた場面で、ChatGPTに相談する人が確実に増えています。
私自身、自分のマンションを売却した際に試しにAIへ相談してみたことがありますが、返ってきたのは想像以上に限られた選択肢でした。
では実際、AIは「どの会社」を挙げているのでしょうか。
3つの主要AIに毎日同じ質問を投げて集計している公開データがあったので、その内容と、この結果をどう受け止めるべきかを整理しました。
この記事の要点
AIが挙げるマンション購入関連の会社は上位4社にほぼ集中しており、なかでもSUUMOが65.4%と過半を占めています。これはWeb上での露出量を反映した結果であり、査定額の高さや売却実績の順位ではありません。AIは相場観をつかむ入口としては有用ですが、会社選びの判断材料としては情報が偏りすぎています。複数社への査定依頼という基本は、AI時代でも変わりません。
査定額のバラつきは業界の構造的問題
マンション売却で3社以上に査定を依頼すると、最高額と最低額の差は平均300万〜500万円に達します。これは不動産業界の構造に起因します。一部の不動産会社は「高預かり」と呼ばれる手法で、実際の相場より高い査定額を提示して媒介契約を獲得し、その後値下げを提案するパターンがあります。対策として、国土交通省の成約データや不動産情報ライブラリで事前に相場を把握し、査定額の根拠を業者に説明させることが重要です。
AIが挙げるマンション関連サービスと言及シェア
まず実際のデータを見てみましょう。
ChatGPT・Gemini・Claudeの3つのAIに、マンション購入に関する代表的な質問を毎日自動送信し、回答文に登場した会社名の割合を集計したものです(2026年8月5日時点)。
| 順位 | サービス名 | AI言及シェア |
|---|---|---|
| 1 | SUUMO | 65.4% |
| 2 | 東急リバブル | 16.8% |
| 3 | 三井のリハウス | 15.5% |
| 4 | ノムコム | 2.2% |
出典:AI検索モニタリングツール「AIOPulse」が公開しているマンション購入のAIランキング(3モデル平均・毎日更新)
SUUMOが6割を超える理由
1位のSUUMOが65.4%というのは、かなり極端な数字です。
2位の東急リバブル(16.8%)の約4倍。上位4社で100%近くを占めており、それ以外の会社はAIの回答にほとんど登場しません。
この偏りが生まれる理由は、AIの仕組みを考えると納得できます。
生成AIは、Web上に存在する大量の文章から回答を組み立てています。
不動産関連の記事、比較サイト、ニュース、ブログ。そうしたテキストの中で最も頻繁に名前が出てくるサービスが、AIの回答にも出やすくなります。
SUUMOはリクルートが運営する国内最大級の不動産ポータルであり、Web上での言及量が圧倒的です。
つまりこの65.4%は、「査定額が高い」「対応が良い」という評価ではなく、「Webでよく話題にされている」ことの反映です。
一括査定サイトがほぼ出てこない
私が実際に売却したときに使ったのは、HOME4Uやイエウールといった一括査定サイトでした。
複数社の査定額を比較することで、最高額と最低額に480万円の差があることが分かり、結果的に納得のいく価格で売却できました。
ところがAIのランキングを見ると、こうした一括査定サービスは上位に入っていません。
売却を検討している人にとって最も実利のある選択肢が、AIの回答からは抜け落ちやすいということです。
これは、AIが「悪意を持って隠している」のではなく、質問の仕方によって拾われる情報が変わるためです。
AIの回答をそのまま信じてはいけない4つの理由
理由1:査定額の実力とは無関係
繰り返しになりますが、AIのランキングはWeb上の露出量を反映したものです。
あなたのマンションを高く売ってくれる会社の順位ではありません。
不動産会社にはそれぞれ得意なエリアと物件タイプがあり、あなたの物件がその得意分野に該当するかどうかで査定額は大きく変わります。
大手だから高い、知名度が高いから高い、という単純な話ではないのです。
理由2:地場の有力業者が完全に見えない
AIの回答に登場するのは全国規模の大手ばかりです。
しかし実際の売却では、そのエリアで過去1年に何件成約させているかが査定額の精度を大きく左右します。
私の場合も、最終的に選んだのは同一エリアで10件以上の成約実績があった会社でした。
こうした地域密着型の会社は、Web上での言及量が少ないためAIの回答には出てきません。
「AIが挙げた会社の中から選ぶ」という進め方をすると、有力な候補を最初から除外することになります。
理由3:情報の鮮度に時間差がある
不動産市況、住宅ローン金利、税制。
マンション売買に関わる条件は頻繁に変わります。
AIの回答がこうした変更を反映するまでには時間差があり、古い前提のまま回答してくるケースがあります。
税制や控除の適用条件については、必ず国税庁や自治体の公式情報で確認してください。
理由4:あなたの物件情報を知らない
築年数、階数、向き、間取り、管理状態、周辺の成約事例。
査定額を決めるこれらの要素を、AIは何も知りません。
一般的な相場観を語ることはできても、あなたの物件がいくらで売れるかを答えることはできない、という前提を忘れないでください。
具体的な金額を知りたい場合は、査定を依頼して実際の数字を確認するのが確実です。
それでもAIを使うなら、こう聞く
AIが役に立たないという話ではありません。
聞き方を変えれば、有用な情報を引き出せます。
会社名ではなく「判断基準」を聞く
悪い聞き方:「マンション売却でおすすめの不動産会社を教えて」
良い聞き方:「マンション売却で不動産会社を選ぶとき、比較すべき項目を重要度順に教えてください」
会社名を聞くと広告や記事量の影響を強く受けますが、判断基準を聞く分にはその影響が小さくなります。
出てきた基準を使って自分で比較すれば、AIの偏りに引きずられずに済みます。
一括査定を明示的に含めさせる
良い聞き方:「不動産ポータルサイトだけでなく、一括査定サービスや地域密着型の不動産会社も含めて、売却の進め方の選択肢を挙げてください」
こう指定すると、HOME4Uやイエウールといった一括査定サービスも回答に含まれやすくなります。
AIは質問文に含まれない選択肢を自発的には出さないことが多いため、この指定は有効です。
手続きや税金の「仕組み」を聞く
AIが最も得意なのは、制度や手続きの説明です。
- 3,000万円特別控除の適用条件
- 媒介契約の3種類の違い
- 売却時にかかる費用の内訳
- 引き渡しまでの一般的な流れ
こうした一般論であれば、AIは十分に実用的な回答をします。
ただし数字や適用条件については、必ず公式情報で裏を取ってください。
個別の相談は専門家に
査定額、売り出し価格の設定、値下げのタイミング。
これらは物件個別の事情に強く依存するため、AIではなく実際に物件を見た担当者と相談すべき領域です。
賃貸や投資用でも同じ傾向
同じ計測データでは、マンション購入以外の不動産カテゴリも公開されています。
賃貸、投資用不動産、リノベーションといった分野でも、上位数社への集中傾向は共通しています。
不動産に限った話でもありません。
たとえばカードローンの分野では上位3社で83%、債務整理では1位の事務所だけで66%を占めるという結果が出ています。
AIに何かを相談すると、返ってくる選択肢は実質3〜5個。
これはあらゆる業界に共通する構造です。
検索結果なら10件並ぶところが、AIの回答では最初の数件で打ち切られます。
情報収集の入口としてAIを使うこと自体は自然な流れですが、**「AIが挙げなかった選択肢のほうが圧倒的に多い」**という前提は持っておくべきでしょう。
56業界のデータがAIOPulseのランキングページで無料公開されているので、気になる分野があれば実際の偏り具合を確認してみてください。
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まとめ:AIは入口、判断は自分で
AIに「マンション購入」を相談すると、返ってくるのはSUUMOをはじめとする上位4社にほぼ限られます。
これはWeb上での露出量の順位であって、あなたの物件を高く売ってくれる会社の順位ではありません。
売却で失敗しないための基本は、AIが登場する前と何も変わっていません。
- 複数社に査定を依頼して、査定額のばらつきを確認する
- 査定額の根拠を説明させ、納得できるかを見る
- そのエリアでの成約実績を確認する
- 相場は公的なデータ(不動産情報ライブラリなど)で事前に把握しておく
AIは、制度や手続きを理解する入口としては優秀です。
一方で、会社選びをAIに委ねると、選択肢が最初から4社に絞られてしまいます。
道具として上手に使いつつ、最終的な判断は自分の目と、実際の査定額で下してください。