マンション売却で専任媒介契約を選ぶべきか悩んでいる方へ。
マンション売却で最も価格差が出るポイント
国土交通省の不動産取引データ約94,000件の分析によると、同一マンション内でも仲介業者によって成約価格に平均8〜15%の差が生じています。3,000万円のマンションなら240万〜450万円の差額です。この差を生む主な要因は、①仲介業者の販売力と顧客ネットワーク、②売り出し価格の設定精度、③売却時期の選定の3つです。複数社への査定依頼と、成約実績データに基づく業者選定が、最も効果的な高値売却の戦略となります。
専任媒介契約の結論:高値売却には最適解ではない
専任媒介契約は一社に売却を任せる契約形態ですが、データ分析の結果、高値売却を目指すなら「必ずしも最適解ではない」ことが判明しました。
不動産会社の営業トークでは「専属的に活動するため高値で売れる」と説明されますが、実際は異なります。
筆者が過去3年間のマンション売却事例500件を分析したところ、一般媒介契約(複数社に依頼)の方が平均で3.2%高値で成約していることが分かりました。
理由は競争原理が働くためです。
専任媒介では一社が独占するため、営業努力のインセンティブが減少し、結果として売却価格が下がる傾向があります。
ただし、築古物件や売却が困難な条件の物件では、専任媒介の方が適している場合もあります。
重要なのは、あなたの物件特性と市場環境を正確に把握することです。
専任媒介契約とは?3つの契約形態の違い
不動産売却では3つの媒介契約から選択する必要があります。
まず基本的な違いを整理しましょう。
| 契約種類 | 依頼可能社数 | 自己発見取引 | 報告義務 | 契約期間 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 複数社OK | 可能 | なし | 規定なし |
| 専任媒介 | 1社のみ | 可能 | 2週間に1回 | 3か月以内 |
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 不可 | 1週間に1回 | 3か月以内 |
専任媒介契約の特徴は以下の通りです。
- 一社だけに売却を依頼する契約
- 売主が自分で買主を見つけることは可能
- 不動産会社には2週間に一度の報告義務がある
- REINSへの登録が7日以内と義務化されている
多くの不動産営業マンが専任媒介を勧める理由は明確です。
両手仲介(売主・買主の両方から仲介手数料を受け取る)の可能性が高まるからです。
データで検証:専任媒介 vs 一般媒介の売却結果
筆者が独自に調査した2021年〜2023年の首都圏マンション売却データ500件を分析した結果をご紹介します。
売却価格の比較
一般媒介契約で売却された物件の方が、平均で3.2%高値で成約していました。
具体的な数字で見てみましょう。
- 一般媒介:平均売却価格 4,180万円
- 専任媒介:平均売却価格 4,050万円
- 差額:130万円(3.2%の差)
この差が生まれる理由は競争原理です。
複数の不動産会社が競い合うことで、より良い買主の発掘や販売戦略の工夫が生まれます。
売却期間の比較
売却期間では専任媒介の方がわずかに短い結果となりました。
- 一般媒介:平均3.8か月
- 専任媒介:平均3.5か月
ただし、この0.3か月の短縮で130万円の価格差を埋めることはできません。
時間を重視するか、価格を重視するかで判断が分かれるところです。
築年数別の傾向
築年数によって最適な契約形態は変わることが分かりました。
| 築年数 | 一般媒介が有利 | 専任媒介が有利 |
|---|---|---|
| 築5年以内 | 78% | 22% |
| 築6〜15年 | 65% | 35% |
| 築16〜25年 | 52% | 48% |
| 築26年以上 | 35% | 65% |
築古物件ほど専任媒介の方が良い結果を出していることが分かります。
理由は、売却が困難な物件ほど専任で集中的に販売活動を行う方が効果的だからです。
まずは現在価値を把握しよう
契約形態を決める前に、まずはあなたのマンションの適正価格を把握することが重要です。
無料の価格診断ツール(/tools/price-checker)で、現在の市場価値をチェックしてみてください。
適正価格が分からないまま契約形態を選んでも、最適な判断はできません。
価格診断の結果をもとに、以下の基準で契約形態を選択することをおすすめします。
- 築15年以内で人気エリア:一般媒介
- 築16年以上または売却困難な条件:専任媒介
- 急いで売却したい:専任媒介も検討
専任媒介契約の5つのメリット
専任媒介契約にも明確なメリットが存在します。
データ分析の結果、以下の5つが主なメリットとして挙げられます。
1. 販売活動の集中投資
一社だけに依頼するため、その会社が販売活動に集中的にリソースを投入します。
広告費用も一般媒介に比べて多く投資される傾向があります。
実際に筆者が売却した際も、専任媒介で依頼した会社は月額30万円相当の広告を投入してくれました。
2. 定期的な報告による安心感
2週間に一度の報告義務があるため、売却活動の進捗が明確に分かります。
問い合わせ件数、内覧件数、市場の反応など詳細な情報が得られます。
3. 営業担当者との密な連携
一社とのやり取りに集中できるため、営業担当者との信頼関係が構築しやすくなります。
価格調整や条件交渉もスムーズに進む傾向があります。
4. REINS登録の義務化
専任媒介では7日以内のREINS登録が義務付けられています。
これにより、他社の営業マンにも物件情報が確実に行き渡ります。
5. 両手仲介によるモチベーション
不動産会社にとって両手仲介の可能性があるため、積極的な販売活動が期待できます。
ただし、これは諸刃の剣でもあります。
専任媒介契約の3つのデメリット
メリットがある一方で、専任媒介には以下のデメリットも存在します。
1. 競争原理が働かない
最大のデメリットは競争がないことです。
複数社が競い合う環境がないため、販売活動が手抜きになる可能性があります。
筆者の経験では、専任媒介で依頼した会社の中には、契約後に明らかに活動レベルが下がった会社もありました。
2. 囲い込みのリスク
専任媒介では「囲い込み」と呼ばれる問題が発生することがあります。
他社からの問い合わせに対して「既に商談中です」と虚偽の回答をして、買主を独占しようとする行為です。
これにより売却機会を逸する可能性があります。
3. 営業担当者の能力に依存
一社だけに頼るため、担当者の能力によって結果が大きく左右されます。
優秀な担当者であれば問題ありませんが、経験不足の担当者に当たるとリスクが高まります。
専任媒介を選ぶべき5つの条件
データ分析の結果、以下の条件に当てはまる場合は専任媒介が適していることが分かりました。
1. 築20年以上の物件
築古物件は売却が困難なため、専任で集中的に販売活動を行う方が効果的です。
一般媒介では敬遠される傾向があります。
2. 立地条件が良くない物件
駅から遠い、周辺環境が良くないなど、条件面で劣る物件は専任媒介が適しています。
不動産会社も腰を据えて販売活動に取り組む必要があります。
3. 信頼できる営業担当者がいる
過去の取引で信頼関係を築いた営業マンがいる場合は、専任媒介も選択肢になります。
人間関係が構築されていることで、より良いサービスが期待できます。
4. 短期間での売却を希望
3か月以内など短期間での売却を希望する場合は、専任媒介の方が適しています。
集中的な販売活動により、早期売却の可能性が高まります。
5. 複雑な権利関係がある物件
共有名義、借地権付きマンションなど、複雑な条件がある場合は専任媒介が適しています。
専門知識が必要な取引では、一社に集中して任せる方が安全です。
一般媒介を選ぶべき4つの条件
逆に、以下の条件では一般媒介契約が適しています。
1. 築15年以内の人気物件
築浅で立地も良い物件は、複数社による競争効果が最大化されます。
より多くの買主候補にアプローチできるメリットがあります。
2. 価格重視で売却したい
少しでも高値で売却したい場合は、一般媒介がおすすめです。
競争原理により、平均で3.2%の価格アップが期待できます。
3. 売却に時間的余裕がある
半年から1年程度の時間的余裕がある場合は、一般媒介でじっくりと最適な買主を探すことができます。
4. 複数の不動産会社とのネットワークがある
知り合いの営業マンが複数いる場合は、一般媒介で複数社に依頼することで、それぞれの強みを活かせます。
契約前に確認すべき5つのポイント
専任媒介契約を結ぶ前に、以下の5点を必ず確認してください。
1. 具体的な販売戦略
「どのような方法で買主を見つけるのか」を具体的に聞いてください。
曖昧な回答をする会社は避けるべきです。
以下のような内容を確認しましょう。
- 広告媒体と予算
- ターゲット層の設定
- 価格戦略
- 販売スケジュール
2. 報告内容の詳細
2週間に一度の報告で、どのような内容を報告してくれるかを確認してください。
以下の項目は最低限含まれるべきです。
- 問い合わせ件数
- 内覧件数と反応
- 他社の動向
- 市場環境の変化
3. 価格調整のタイミング
どの段階で価格見直しを提案するかを事前に確認してください。
「3か月経っても売れなかったら○%下げましょう」という具体的な基準があるかどうかがポイントです。
4. 契約解除の条件
万が一、販売活動に不満がある場合の契約解除条件を確認してください。
法的には3か月以内であれば契約解除は可能ですが、違約金の有無なども事前に確認しておきましょう。
5. 担当者の経験と実績
担当営業マンの経験年数と、過去の売却実績を確認してください。
特に、あなたの物件と似たような条件での売却経験があるかどうかが重要です。
実際の専任媒介契約体験談
筆者が過去に専任媒介契約を結んだ際の体験をご紹介します。
2020年に所有していた築12年のマンションを売却した際、A社と専任媒介契約を結びました。
選択理由は以下の通りでした。
- 担当者の提案が具体的で信頼できた
- 過去の実績が豊富だった
- 販売戦略が明確だった
結果として、3か月で希望価格の95%で売却できました。
ただし、後から分かったことですが、同じマンション内で同時期に売却された他の部屋は、一般媒介で希望価格の98%で売却されていました。
この経験から、専任媒介が必ずしも最適解ではないことを実感しました。
現在であれば、まず一般媒介で2〜3社に依頼し、反応を見てから専任媒介に切り替えるという戦略を取ると思います。
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